内科専門医資格更新についての一考察

現在、内科専門医資格の更新は、点数制であり、5年間で50点の確保が必要である.内科学会の主催する講演会を聴講しても、その内容は診療に実際的ではないことが多く、資格更新のために単に点数を稼ぎにいく人が極めて多いのは皮肉にも理解できないことはない.

内科専門医の名簿をみると、現在内科医ではないのに資格を持っている人がみられる.なぜ彼らが内科専門医の資格を更新できるのだろうか.これは現行の点数制度のおかげである.これでは、世間から内科専門医としての評価を得ることはできない.これを打破するには、内科専門医という既得権は認めず、資格を更新するためには、出席点は認めず、内科専門医全員に5年ごとに筆記試験を課し、これに合格すれば更新内科専門医として一段高い評価の内科専門医とすることを提案したい.

高度な医療機器が導入され続け、過去10年間で内科診断学は一変し、自分自身も含め、研修を終え一つのsubspecialityを持った内科専門医が、自分の専門外の内科の日新月歩の新しい診断法、治療法を会得するのはきわめて困難である.このような情勢の中で、内科専門医の定義は時代とともに変化してきている.内科専門医のあるべき姿については、種々の意見があり結論はない.私は、本誌、1995,7,157において自分が描く理想の内科専門医を論じた.そのためには、内科専門医の資格更新試験として、各専門医から専門以外の内科医師に最低限知っておいてほしいことで超専門的でないこと、患者の治療に即した実際的なもののみを各領域にわたりまんべんなく出題し、90%以上正解を合格ラインとすればどうだろうか.まれにしかみない疾患、各学会でのトピックではあるがまだ確立されていないこと、大学病院または、大病院でしかできない特殊検査を試験問題からはずし、通常の臨床を一生懸命にしていれば90%以上の正解率を期待できるような問題が望ましい.そのためには、”一般内科医のための”循環器内科の知識、や”一般内科医に必要な”神経内科の知識といった講演会を内科学会が主催することである.講演会の目標は知識の伝達が主で、出席の点数を加味しないことが重要である.と同時に、内科学会が内科専門医に上記のような主旨のzs3多数の練習問題を配布し、それら問題を解くことにより各内科の必要な知識が保てるようにすればよい.

過去に内科専門医であっても、現在はある専門科の超専門的な仕事のみをしていれば、内科専門医の資格がなくなってもいいのではないだろうか.超専門医や大学教授と、私のいう内科専門医は両立しないと思われる.そうすることにより、世間で内科専門医の評価が高くなり、博士号よりもっと実のあるものになるような気がする.内科学会の重鎮の方々に一考をお願いしたい.